
※登場人物は全て仮名です。
三田村さとみ、42歳。美容系のウェブメディア編集者。 「おいしくないものは食べたくない」が人生のモットー。
だからこそ、ダイエットのたびに失敗してきた。
「糖質制限?やってるよ、完璧に」
会社の同僚たちとのランチで、さとみは胸を張った。サラダランチをフォークで突きながら、隣の席で低糖質クッキーを食べている後輩の美咲を横目で見る。
「美咲ちゃん、それ食べてダイエットになるの?」
「はい、糖質3グラムしかないんですよ」
「ふーん」
さとみは内心で笑った。どうせまずいに決まってる。自分は正統派。甘いものは完全に断つ。それが本物のダイエット。
その夜、さとみの部屋。
冷蔵庫を開ける。閉める。また開ける。
「ダメダメダメ」
寝室に戻る。5分後、また冷蔵庫の前。
結局、近所のコンビニへ。深夜0時。
レジに並べたのは、チョコレート菓子2袋、アイスクリーム、プリン、ポテトチップス。
「袋、分けますか?」
「いえ、一つで...」
店員の目が気になる。この量、全部一人で食べるんですか?という無言の圧力。
「明日から、本気出す」
この言葉、今年だけで何回言っただろう。
さとみの「完全糖質オフ生活」は、だいたい3日で崩壊する。
4日目の夜、必ず爆発する。
そして翌朝、体重計に乗って絶望し、また「今日から完璧に頑張る」と誓う。
この無限ループ、もう3年続いていた。
ある日、デスクで仕事中。
「三田村さん、ボールペン貸してもらえます?」
営業の田中が話しかけてきた。
「あ、はい。引き出しに...」
引き出しを開けた瞬間、時間が止まった。
大量のお菓子の空き袋が、溢れんばかりに詰まっている。
「あっ...これは、えっと」
田中は目を逸らした。気まずい沈黙。
「資料整理してなくて...ボールペン、見つからないです」
顔から火が出た。
その日の帰り道、さとみは後輩の美咲に声をかけられた。
「三田村さん、元気ないですね」
「うん...ちょっとね」
「よかったら、お茶しません?」
カフェで、さとみは堰を切ったように話し始めた。
「もう無理。ダイエット、向いてないんだと思う」
「どんなダイエットしてるんですか?」
「糖質制限。甘いもの、完全に我慢してる。してるつもり...でも、結局爆発して食べちゃうの」
美咲は少し考えてから言った。
「三田村さん、低糖質のおかしって知ってます?」
「知ってるよ。でも、まずいでしょ?おいしくないものは食べたくないし」
「食べたことあります?」
「...ない」
美咲はバッグから小さな袋を取り出した。
「これ、私が毎日食べてる低糖質チョコ。一つ、食べてみてください」
さとみは恐る恐る口に入れた。
「...え?」
「どうです?」
「普通においしい。というか、普通のチョコと変わらない」
「でしょ?糖質は一袋5グラム。普通のチョコの10分の1以下です」
さとみは固まった。
「私、何してたんだろう...」
その夜、さとみは自分の食生活を振り返った。
ノートに書き出す。
「我慢する日々の糖質:ゼロ」 「爆発した日の糖質:推定200グラム以上」 「週に2回爆発するから...月に8回...」
電卓を叩く。
「月に1600グラム!?」
次に、美咲の生活を想像して計算する。
「低糖質おかし、一日一個で糖質5グラム」 「毎日食べても、月に150グラム」
「10分の1じゃん...」
さとみは頭を抱えた。
完璧主義で我慢して、結果的に10倍の糖質を摂取していた。
「私、バカじゃん」
翌日、さとみは美咲に聞いた。
「低糖質のおかしって、他にもあるの?」
「めちゃくちゃありますよ。クッキー、ケーキ、アイス、和菓子まで」
「なんで誰も教えてくれなかったの」
「三田村さん、『完全糖質オフしてる』って豪語してたじゃないですか。言いづらかったんです」
確かに。自分で言ってた。
さとみは低糖質おかしを取り入れ始めた。
最初は半信半疑だった。
でも、不思議なことが起きた。
夜中に冷蔵庫を開ける回数が減った。
コンビニで大量買いすることがなくなった。
何より、「食べちゃった」という罪悪感がない。
3ヶ月後。
同僚とのランチで、さとみは低糖質クッキーを食べていた。
「三田村さん、それ食べてるんですね」
「うん。おいしいし、罪悪感ないし、最高だよ」
かつて低糖質おかしを笑っていた自分が嘘のよう。
半年後、久しぶりに会った友人に言われた。
「さとみ、なんか雰囲気変わったね。表情が柔らかくなった」
「そう?」
「前は、いつもピリピリしてた。我慢してる感じ」
そうか、と思った。
我慢し続けるストレスが、顔に出ていたんだ。
さとみは、ふと思った。
3年前の自分に会えるなら、何て言うだろう。
「完璧主義、やめな」
「我慢して爆発するより、低糖質おかし食べた方が糖質少ないよ」
「おいしくないって、食べてもないのに決めつけないで」
「まずいものもあるけど、おいしいものもたくさんあるから」
「もっと、自分に優しくしていいんだよ」
そして今、さとみは後輩たちにこう言っている。
「ダイエットは我慢大会じゃないよ。続けられる方法を選ぼう」
デスクの引き出しには、もう空き袋は入っていない。
代わりに、低糖質のおかしが数個。
「これ、おいしいんだよね」
そう言いながら、さとみは午後のおやつタイムを楽しむ。
罪悪感なんて、もうない。
あの日、美咲が声をかけてくれなかったら。
あのチョコを差し出してくれなかったら。
さとみは今も、冷蔵庫の前で戦っていただろう。
「もっと早く知りたかったな」
そう思いつつ、さとみは今日も低糖質クッキーを一つ、コーヒーと一緒に味わう。
おいしいものを食べながら、健康的な生活を送る。
それが、42歳のさとみが見つけた答えだった。
※低糖質おかしの効果には個人差があります。バランスの取れた食生活と適度な運動を心がけましょう。気になる症状がある場合は、医師や管理栄養士にご相談ください。